不倫、恋愛、結婚、などなど、男女間の関連に関係する語はたくさんあります。ここは人間の本能に関連するところでもあり、かつ後天的に人間に発達してきた論理に関係するところでもあります。こういった男女関係においても国別の差があるのか、という点について掘り下げていきます。
🍓この記事の目次🍓
不倫を巡るフランス語
日本では某週刊誌による有名人の不倫報道が盛んに行われています。恋愛だ不倫だなんていうのは完全にプライベートな話であり、有名人だろうが何だろうが他人が暴き立てていいものとは到底思えませんが、現実には週刊誌によるプライバシー侵害が横行している始末です。なぜあそこまで人のプライバシーを世に曝したいのか理解しかねるところです。不倫話は世界中どこにでもあります。有名人だろうがただの一般人だろうが無関係に存在しています。この記事ではフランスにおける恋愛事情、不倫事情について少し掘り下げてみます。
不倫を表すフランス語の単語はいくつかあります。例えば
infidélité
というところは最も使われそうなところです。その他
adultère
とか、
immoralité
あたりが使われそうな単語です。こう眺めてみるとなんとなく婉曲的な表現なんですよね。もともと日本語の不倫もまあかなり婉曲的な表現で、よく考えてみれば不倫とは「倫」にあらず、と言っているわけですから人の道から外れているというのが元の意味であって、人の道から外れるのは何も男女の中だけではないはずですが、しかし不倫と言えば男女の中の特殊な関係を指す以外の意味では使われません。フランス語でも同様のようです。よからぬことはあまり直接的には表現したくないというのは世界共通の考え方なのでしょうか。
不倫の発生数・発生率では差はないのではないか
比較が難しいという事情はありますが、基本的には不倫がどのくらい発生するのか、この点については国によって大きな違いはないと考えています。なぜ男女はくっつくのかと言えばそれは食欲、睡眠欲と同じような話なのです。これらは国や宗教を超えた話であって、性に関する問題もこれと同じなのです。ここで言う「不倫事情に国によって違いがない」という説は、あくまで発生件数、とか発生率とか、という点であることに注意してください。人間の欲に関係しているところなので、発生するのはある意味必然であり、それには差はないという意味です。
不倫や恋愛に対する考え方には違いがみられる
不倫に関する考え方について日本とフランスで違いがあるか、それはとても難しい議題です。男女関係にルーズな人、今風に言えばチャラい人は世界中どこにでもいます。日本にもいますしフランスにもいます。イタリアなんか知られたところですし、仏教国のアジアの国々にもいますし、キリスト教系の欧州にもたくさんいます。恋愛や不倫といった話はとても個人的な問題なので、フランス人と話す機会がそこそこある人でもなかなか立ち入れない領域であることは間違いありません。しかし、直接フランス人と話したり、その他情報源からの情報から判断すると、やはり考え方には違いがあると感じます。
なぜ違いが出て来るのでしょうか。それは、発生自体は「欲」から出て来るものだが、それを自分の行為の理由づけとしてどう捉えるのかという話になるからです。文化や意識的な側面に属することなので、国によってその傾向はかなり違ってきます。つまり、恋愛観・結婚観・不倫観というのは「欲」をいかに生活の中で運用していくのか、という話になるので人間独自の「欲」の運用文化的な話になります。
結婚観には日本とフランスで大きな差
不倫の話を進める前に、まずは結婚観や恋愛観の違いについてみてみましょう。結婚観については、日本とフランスではかなり違うようです。こちらの東洋経済オンラインの記事「フランス人から見たら日本女性は不思議だ」に興味深い考え方の差が書かれています。なぜか結婚にこだわり続ける日本女性とそこまでこだわらないフランス人女性の考え方の差が描写されています。もちろん、記事の内容はサイト管理人個人の意見であるのは間違いないですが、国の傾向と違いに関する描写は恐らく正しい判断に基づいていると思われます。こちらの記事からもわかるように、フランスでは結婚という法的な制度そのものにはさほどこだわりません。実際、付き合っていて子供までいても、法的な結婚をしていないカップルも多く存在します。フランスにはPACS(日本語では民事連帯契約というらしいです)という、内縁以上で結婚未満の関係が法律で認められているそうです。
つまり、フランス人にとっては、お互い好きなら一緒に暮らし、法的に結婚しているかしていないか、という制度そのものにはさほど関心がない、好きではなくなったら別れる、という非常にシンプルな考え方に基づいているといえます。このシンプルさ、合理性がやはりフランスの特徴です。これはフランスだけではなく、欧州においては一般的な考え方です。結婚だけではありません。物事を合理的、理論的に考える傾向があります。男女問わず、です。
専業主婦という選択肢がまだ存在する日本、存在しないフランス
日本はどうか、というと、もちろん世代や時代によって変わってくるというのは前提としてあるとして、しかし、先の記事のフランス人女性が述べるように「結婚」という制度にこだわる場合が多くあります。同棲という状態を長く続けて、この先もそのままでよいと考える日本人、特に女性はあまりいないと思います。そして男女間の付き合いも成熟してくると多くの場合「結婚」に至ります。
結婚に至ってからの生活様式にもかなり差があります。日本ではまだ専業主婦というものが、近ごろ減少傾向にあるとはいえまだ多く存在しています。フランスの場合にはもうほとんど専業主婦はいません。少々年配の世代には専業主婦である女性(専業主婦であった女性)はいます。しかし、現在労働力の主力となるような世代では専業主婦はほとんど存在していません。
余談ですが、こちらに厚生労働省が行った「若者の意識に関する調査」の結果が公表されています。平成25年3月に実施されています。何がいい悪いという話ではなく、あくまで傾向の分析という位置づけです。
厚生労働省による「若者の意識に関する調査」の結果(平成25年3月実施)
結果報告書(pdf)はこちら
調査対象は平成25年当時の15歳~39歳の男女です。その中で、女性に対する質問で「結婚(事実婚含む)したあとは専業主婦になりたいと思いますか。」に対する回答がこちらです。
結婚(事実婚含む)したあとは専業主婦になりたいと思いますか。単一回答 | 数 | % |
そう思う | 65 | 8.2% |
どちらかといえばそう思う | 205 | 26.0% |
どちらともいえない | 215 | 27.2% |
どちらかといえばそう思わない | 198 | 25.1% |
そう思わない | 106 | 13.4% |
全体 | 789 | 100.0% |
「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計が34.2%となり、3人に一人を若干上回る数字となっています。「そう思わない」と「どちらかといえばそう思わない」の合計が38.5%で肯定派を少し上回ってはいますが、いまだに専業主婦を望む人が一定数存在しているのは事実です。ちなみに、専業主婦を望む理由を問うた質問に対する回答がこちらです。
なぜ専業主婦になってほしい(なりたい)と思いましたか、当てはまるものすべてを選択してください。複数回答 | 数 | % |
夫の収入だけで暮らしていけると考えているから | 83 | 17.9% |
結婚したら女性は仕事はやめるものだと思うから | 43 | 9.3% |
結婚したら女性は仕事をやめるように周囲(両親や職場)から言われているから | 6 | 1.3% |
女性には家事や子育てなど、仕事をするよりもやるべきことがあると思うから | 285 | 61.4% |
私(配偶者である女性)は仕事が嫌いだから | 96 | 20.7% |
夫がしっかり働けるようにサポートするのが妻の役目だから | 136 | 29.3% |
その他 | 37 | 8.0% |
全体 | 464 | 100% |
では、男性側の考えはどうなっているのでしょうか。平成25年当時の15歳~39歳の男性に対して「結婚相手(事実婚含む)の女性は専業主婦になってほしいと思いますか。」という質問をしたときの回答です。「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計が19.3%で5人に一人が専業主婦に肯定的という結果でした。一方で、「そう思わない」と「どちらかといえばそう思わない」の合計が30.2%ということで、男性は女性に比べれば配偶者が専業主婦になることをあまり望んでいないということになりそうです。どうやら男女間でいくらか考え方に差があるようですね。
結婚相手(事実婚含む)の女性は専業主婦になってほしいと思いますか。単一回答 | 数 | % |
そう思う | 39 | 3.9% |
どちらかといえばそう思う | 155 | 15.4% |
どちらともいえない | 508 | 50.5% |
どちらかといえばそう思わない | 203 | 20.2% |
そう思わない | 100 | 10.0% |
全体 | 1005 | 100% |
世代が違う歳の差カップル、仏大統領マクロン
不倫とは少々意味が違いますが、歳の差カップというのもなんとなくスキャンダラスな意味を持って捉えられることが多い男女関係であると私は思っています。歳の差カップル、歳の差婚、普通にどこにでもある話です。日本では芸能界でそんな話をよく目にします。フランスでは政界に、しかもトップレベルの政治家に歳の差カップルが多く見受けられます。2017年、第25代フランス大統領に選出されたエマニュエル・マクロン氏は若干39歳です。共和国前進(フランス語: La République En Marche)という政党を立ち上げ、共和党のフランソワ・フィヨン氏や極右国民戦線のマリーヌ・ル・ペン氏を破って大統領に選出されたことは記憶に新しいところです。奥様は現在63歳で24歳ほど年上です。マクロン氏が高校生のときのフランス語(つまり日本で言う国語)の先生だった人です。出会いの場はマクロン氏が通っていた学校で、マクロン氏が15歳、ブリジットさんが39歳でした。ブリジットさんは当時他の男性と結婚しており3人の子供もいました。もちろん日本でも先生が生徒と結婚する話はよくある話ですが、それは多くの場合先生が男性で生徒が女性ということがほとんどでしょう。なので、マクロン氏のケースは日本では相当珍しいパターンと言えます。フランスでも珍しいのかもしれません。
不倫に関する考え方にも差
ミッテランも歳の差カップル、ただしこちらは不倫関係
フランス第21代大統領のミッテラン氏にも歳の離れた愛人がいました。こちらの記事でそこのとに少し言及しました。ミッテラン氏が46歳の時に19歳のアンヌ・パンジョ(Anne Pingeot)という女性と出会い恋に落ちました。なんと27歳もの年齢差があります。ミッテラン氏には奥様がいましたのでつまり不倫ということになります。しかもアンヌ・パンジョとの間にマザリーヌという子供までもうけています。そして、ミッテラン氏がアンヌ・パンジョにあてて書いた1200通以上の手紙が昨年出版されました。
欧州的な不倫とは恋愛対象の変化
この例からもわかるように、フランスや他の欧州における不倫というのはどうやら恋愛対象の変化と言えそうです。ある異性(同性の場合もあるかもしれませんが、それはさておき)と恋愛や結婚をしたが、恋愛の対象が変わってしまう、というのが欧州的な不倫のようです。したがって結婚や恋愛をキープしつつ別の色恋も同時進行される、ということではなく、他に好きな人ができたからこれまでの恋愛や結婚にけりをつけ、他の恋愛に走る、というのが典型的な例のようです。
日本での不倫のイメージは、近ごろの有名人の不倫のパターンから思うに、現在の結婚や恋愛をキープしつつ別の恋愛も模索する、というスタイルのようです。もちろん一概には言えず人によって違うところはあるでしょうが。そして最も違うところは、日本では不倫が公にとって良からぬことであり、社会から制裁を受けることがあるところです。昨今の有名人のマスコミからの叩かれようを見ているとそのように思います。
不倫は個人の問題
先のミッテランの例でもわかるように、フランスでは不倫があったとしてもだからといってそのことで社会が勝手に制裁を加えようとするケースはまれです。一方日本ではどうでしょう。昨今の不倫を巡る報道で社会的制裁を加えられた人は多く存在します。職を奪われた人も多く存在します。タレント、政治家が標的とされるケースが多くあります。彼らはそれにより出演機会を失うこととなりましたので、職を奪われたのと同じことです。果たして、不倫ごときで仕事を奪っていいものか、サイト管理人は大いに疑問です。いい悪いはさておき、それは個人の問題であって、個人でけじめをつければよい話のはず。周りがどうこう言う話ではないとサイト管理人は考えます。
日本ならばもし政治家が不倫などしようものなら議会やマスコミから追及され、ネットでも叩かれて、政治生命を絶たれかねないところです。場合によっては辞任に追い込まれたりもします。連日メディアがやたらと芸能人や政治家の不倫のネタを取り上げています。不倫なんて純粋に個人の問題なのに何でそんなに叩かれなきゃいけないのか、私にはさっぱりわからず、総攻撃を食らってしまった有名人の方々は本当にお気の毒と思います。一方、フランスにおいてはたとえ大統領であっても他人は私事には深く立ち入らない、という原則がありました。直近ではこの原則は崩れつつあるようにも見えます。先日現職大統領のオランド氏が愛人の存在を暴露され、もともと不人気だったところでのスキャンダルだったので苦境に立たされた、というのは記憶に新しいところです。しかしフランス人には好きなことを人目をはばからずにやる、やりたいことを我慢しない、という気質は備わっているのは間違いありません。時代や個人によって程度の差はあれど、日本人はやはり人目を気にし、やりたいことを我慢し、他人と違うことをするのに抵抗を感じるケースが多くあるそうです。まさに「空気を読む」ということです。ここは恐らくDNAに刻まれた気質なので、なかなか日本人はフランス人のようにふるまうことは難しいでしょう。もちろん逆もまた真なりです。
日本でも芸能界はフランスに近い?
そんな日本においても芸能界は少し事情が違うようで、男女関係においても好き勝手にやる傾向が強そうです。芸能人の不倫なんてメディアに出てくるものですら日常茶飯事ですから、きっと氷山の一角なのでしょう。歳の差婚なんていうのも芸能界ではよく聞く話です。かつて俳優の石田純一は「不倫は文化だ」といって非難されたそうですが、一般日本人の口からは到底出てきそうもない発言をマスコミの前でしてしまうところは遠慮の少ない芸能人ならではでしょうか。知名度が高い人の特権ともいえるかもしれません。歌舞伎役者の奔放ぶりは有名ですが、愛人、隠し子などなど、スキャンダラスなネタには事欠きません。やはり何やら日本の芸能界とフランスの国民性には類似のものがあるようです。この二つの世界の共通点は自由度の高さでしょう。例外はもちろんあるでしょうが、一般的に日本人は人目や評判、他人からの評価を気にします。そしてそれが行動や思考の原則の一つになります。それとは逆に日本の芸能界やフランス人は人目をはばからず、他人からの評判も気にせずやりたいことをやる、そういう文化なのです。ここに決定的な違いがあります。どちらが住みやすい世界でしょうか?それは一概には言えませんし、各々考えるべきことなのでここではどちらがよいと断言することは避けます。
不倫というものは日本にも多数存在します。日常的にあると言ってもいいかもしれません。そんな不倫関係を考えるのに参考になる書籍を挙げておきます。日本人による書作ですが内容はなかなか濃いものがあります。亀山早苗というフリーライターの著作です。
やりたいことをやるという自由度の高さ
フランスの恋愛事情や日本の芸能界の男女関係を語ろうとすれば、恋愛観というよりは人生観というこであると気づきます。つまりは恋愛に限らず自分の行動に制約を設けないというのが彼らのスタイルだとわかります。日本人社会では誰も何も言わなくても自らに制約を課そうとする傾向があります。このことから、純粋に個人の問題である他人の不倫に首を突っ込んで叩こうとしたり、あるいは他人の目を気にして夜遅くまで残業したり、といった日本社会固有の行動様式が生まれます。若干窮屈さを感じるのは自分だけではないと思います。そんな彼らの行動様式がうかがい知れる書籍を挙げておきます。
恋愛観、結婚観、不倫観
一通りお話してみて、概ね日本とフランスにおける恋愛、結婚、不倫に対する考え方の違いが見えてきました。サイト管理人が考える違いを表にしてみました。なるべく客観的に判断しています。しかし、意見なのである程度主観も入ることはご容赦ください。
日本 | フランス | |
恋愛 |
|
|
結婚 |
|
|
不倫 |
|
|
ポリアムール(polyamour)
以前にこのブログでポリアムール(polyamour)について記事にしました。"polyamour"とは関係するパートナーの合意のもと、同時に複数の人との愛情関係や男女関係を維持すること、です。つまりお互い公認で他の男女関係も公然と維持する、ということになります。まあ、こんなことがどのくらい実例としてあるかまでは知ることはできませんが、メディアの記事として取り上げられるくらいですから、実例も豊富にあることは想像できます。
こんな記事があります。
Arrêtez avec le terme "cougar" !
yahoo!フランス版に掲載された記事で、cougarと呼ばれる若い女性を好んで恋人にする女性に関する記事です。cougarというのはクーガーのことでピューマとかアメリカンライオンと呼ばれる南米に住むネコ科の肉食獣です。まあ若い男性を好む女性を多少揶揄するような表現なのかもしれません。男性を獲物に見立てているということになるのでしょうか。日本における「肉食」に近い表現なのでしょう。しかし、記事の中ではそういった揶揄的な内容ではなく、サイト管理人が女性であることもあり、彼女らの内面やそうする理由について述べています。この例も幅広い恋愛観を持つフランス人の特徴をよく示しています。ある意味自由奔放な恋愛観の一つの表れなのでしょう。
サイト管理人がフランスに興味を持つ理由の一つがこのフランス人の自由奔放さなのです。日本人にはなかなか真似できないところです。先の宇野宗佑の例もそうですが、日本では一般人であっても不倫関係の愛人を作ればまず間違いなく非難の対象となります。フランスにおいてはそれは個人の問題で他人が立ち入る話ではない、となります。フランス語をある程度使えるようになれば、こういった点についてフランス人と直接話してディスカッションすることもできるようになります。サイト管理人にとっての大きなモチベーションの一つが、この日本人とフランス人の気質の差なのです。